2011年6月3日福島県いわき市豊間

 以前も書いた様に福島浜通の海岸線は時折濃い霧に包まれる。それが夕刻と重なる時の美しさは言葉にする事ができない。それよりもっと時間が過ぎて、いわゆるトワイライトな時に重なった時に私は出くわした。その景色は私が今までに見た事の無い様な色合いで海の向こう側へと広がっていた。
 それを見た瞬間に私は息を吐きながらシャッターを切った。切りながら「これは絶対にフィルムに定着するはずがない」と思った。案の定ラチチュードの狭間に色を吸い取られた写真は、美しいものではなくどこかくぐもったありきたりな写真へと変換され私の前にもう一度現れた。

 ガッカリ半分、やっぱり半分、私はこの写真を見ながらあの時のあの場所を思い出す。それだけで、何故だかこの写真は私の中での決定的数分の一秒に変わった。写真なんてそんなもんだ。そう思えたのがあの場所で本当に良かったのかと後で自問しようが、今はそれでいいのです。