どんよりとした空模様が続く八月の始め、ガーナバドゥ・クーデゥメテ氏は年収の2倍以上の借金を苦に農薬を飲み自ら命を絶った。


 翌朝目覚める事の無かった彼の遺体は病院へ運ばれすぐに司法解剖された。数時間の後彼は白い布に包まれ、村人たち数名によってトラックへと運ばれ、再び村へと戻された。

 彼の遺体が到着するや否や異様な静けさを保っていたその場所が一瞬にして悲しみの中心となり、慟哭で全ての音がかき消されていった。親族は体をぐにゃりと曲げて泣き叫び、周りの者達は彼らを支えていた。
 辺りは香水の匂いが立ちこめ、マリーゴールドのオレンジが目に眩しい。時折聞こえる鶏の鳴き声が何故だか日常へと回帰させる。


 遺体は木で出来た担架によって綿花畑のそばに運ばれ、積み上げられた木材によって遮られ、長男が周りの人達に支えられながらようやく着火され、ガソリンをかけられた木材はたちまちにして大きな炎となった。
 立ち上る炎を囲んで親しかった人達が別れの言葉を告げていく。


 「シャンティシャンティ」(ヒンディ語での安らぎや平和の意)


 その言葉によって一連の儀式は幕を閉じた。