曇天の中に時々さす太陽に露出を狂わされる。それにも関わらず列車には梅を目当てに、クライミングを目当てに向かう人がまばらながらいるのに驚いた。空には鳶が旋回して、そのわずか下にはうっすらと雪が積もった山頂が見える。


 奥多摩湖の少し奥にある駐車場には5,60台の族車が停まっていた。恐る恐る声をかけてみると意外にも色々聞かせてくれて、尚かつフランクな感じに対応してくれた。
 彼らは埼玉方面から来たツーリング仲間で今は帰る所らしい。いくつかのグループがまとまっては知っている様だ。そう教えてくれたのはトラック運転手の方で、私の田舎の名前も知っていた。驚きだった。
 後ろに乗る人は何やらのり方が決まっている様に見えた。ポケットに手を突っ込みがに股で足を開いてのる。それがスタイルの様だ。中には私よりも若そうな女性もいて何だかみていて微笑ましかった。

 いつもこういったある種怖そうな人達と話をしてみると、総じて大して怖くなかったりするのが何故だか新鮮だ。


 そんな彼らと別れてひたすら奥多摩湖周辺を歩いてみる。とりあえず道が細いので車が怖い上に、何も無い。たまに「地震が起きたら何をする?答えは三つ。正解者には山菜1束プレゼント。」とか訳の分からん看板や、温泉の源泉と書いているにも関わらず冷たかったりと、何とも不思議なイベントがある程度で、撮りたいと思える様なものがあまり無く残念だった。
 しかし、その中でも唯一撮ったのが山からダムへと注ぐ水源とおぼしき所で、これ以上行ったら危ないと思いながらも水源へと引っ張られる様に進んでしまうのが自分でも不思議だった。河口とはまた違った感覚を覚えた。


 それからしばらく歩いてドラム缶橋なるところへたどり着く。まずこの橋のシステムに感動したとともに、ガンジス川にも似た様なものがあった事に気付く。要は水位が上がっても対応できるという所のなのだが、このドラム缶箸は階段にレールが突いており、水位に合わせて橋と階段の部分が上下するのだ。このシステムに何故だか凄く燃える。熱い。熱いぜ、東京都利水局(うる覚え)!!


 そんなドラム缶橋は釣り人に撮っても絶好のスポットだ。そこで一人の釣り人を撮らせてもらった。

 朝から来ていると言う彼は、朝の寒い中いくつも針の突いた仕掛けにエサをつけるのが辛いといいながらも何だか楽しそうに淡々と話してくれた。10年近くここで釣りをしている彼は青梅から通っている大工で、自身の釣り竿をいくつもつけられ、竿をスイングさせる事が出来る謎の装置も自身で作ったと言って笑った。
 釣っているのはワカサギとマスで、マスを釣るのにワカサギを釣っているのだが、水深が深いのでワカサギを引き上げると水圧の変化でワカサギが弱ってしまってどうも・・・と嘆いて、あっちの竿こっちの竿と不安定な浮き橋を歩き回っていた。
 そんな彼と淡々と、ある意味リズミカルな会話をしていると何故だか心地の良さを感じた。あまりこういった人とは出会わないので何だか嬉しくなった。それにしてもここのワカサギはでかかった。


 ここ間で上流に行ったのは始めてだった。何も無い事は想像していたがこれほどまでに何も無くコンクリートの上を歩き続けるとは思っていなかったが、何故だか今日はとても大成功な気がしてならない。もの凄くでかいダムに流れ込むわずかな流れがやがて東京湾へと続いているとはなかなか想像できないが、何だか水の凄さを実感できたのと族車に乗ってる人も怖い人ばかりじゃないんだなってのと、釣り人との会話で、結局何処でも一緒なんじゃネーのかとか思って悦に浸れた。