2時くらい。久しぶりに京王線稲田堤から歩きはじめる。雲の形がドラマチックで時折覗かせる太陽に露出の制御を支配されるのも悪くないと思える穏やかな風と大気は秋を感じさせ、虫達の鳴き声も夏から秋へと変わっていた。そんな日。


 2課程前の台風の影響で水量が増し、普段吸われる様な所も薄らと水が流れていた。ようやく来た秋の訪れを待ちわびた様に、野球、サッカー、自転車にランニング、フリスビーと様々なスポーツを見る事が出来る。
 こんな日はさんまでも焼きながら酒を飲みつつ少年野球でも眺めていたい気分になる。

 左岸に移りしばらく歩くと堰が解放されているのが眼に飛び込む。普段は水の下になっている部分は歩く事が可能で、濁った水が解放された部分から大挙として流れているのを間近に見る事が出来る。
 川の超ど真ん中くらいまで歩く事が出来るのでそこから上流下流を見るのは実に新鮮で、何度もシャッターを切ってしまった。

 しばらく歩いていると雷に打たれておれたであろう松の木が見えてくる。私が初めて和泉多摩川に来た時からある松は豪快に折れ、それを眺める人で賑わっていた。あるおばあさんが「狛江版の朝日新聞に載っていた。」という事を教えてくれた。

 そんな松を撮影している最中にある女性が視界に入り何故だか気になった。しばらくすると彼女は折り返し戻ってきたので声をかけてみた。


 彼女は狛江付近に住み、今は受験生だという。といっても現役ではなく社会人から別の事に挑戦する為だという。介護福祉士?の様な仕事をする為の専門学校を受験するそうで、結構倍率が高いそうだ。
 始めは撮影を拒否されてしまったが、何故だか向こうからその様な話しをしてくれて、あさってが受験だと言い、勉強に疲れたか何かで多摩川へ来たという彼女は最後にはどうにか頼み込んで少し離れた距離から写真を撮らせてくれた。
 何かちょっと惚れた。