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2011年日本写真協会新人賞を受賞した村越としや氏は同じ学校の先輩にあたる。と言っても、専門学校でのその関係は皆無と行っていい、彼と出会ったのはあるグループ展のレセプションだった。
それ以来、会えば酒を飲みながら写真の話しをする様な間柄になった。
福島県須賀川市出身の彼は震災以前より故郷を撮り続けている彼が、今どの様に考え、どの様に撮影をしているのかという事が純粋に気になり同行させていただいた。
今の福島と昔の福島で何が変わって何が変わっていないのか、この場所がもしかしたら撮れなくなってしまうのではないのかという不安、そういった事を話していた様な気がする。
震災以降彼は立て続けに写真展を4回(震災直後のチャリティー展は除く)行っていたと記憶している。TAPギャラリーとcount zeroでの展示を見る限り、彼が今まで発表していた、ピクトリアリズムを彷彿とさせる低コントラストで霞がかったどことも言えない風景写真とは大きく変わっていたのが印象深かった。
そして、写真集出版を期に行われた蒼穹舎での展示では震災以前の写真でありながら今までとは違う、ある種人間味を帯びた作品に仕上がっていた様に思う。人が写っていたり、家の明かりであったりというのは勿論であるが、私は道路標識が写っている2点に大きな違和感を感じた。
以前の彼であれば多分入れてはいなかったであろう。もしくは、入れていたとしても極小さなものであったはずだ。しかし、今回はなかなかに目立つ形で写っている。私はそれを人間の所作の様に感じ、展示全体に人間味を与えている様に感じた。
先日話した際には「自分でもどうして行けば良いのかわからない。だからただ撮り続ける。」と言っていた。それは十分に写真に現れているし、その変化を見られるのは今だけなのかもしれない。
そんな彼の展示が昨日より清澄白河にあるTAPギャラリーで行われている。
村越としや写真展 『f』
2011/12/13(tue)-12/25(sun)
13:00-19:00 close(mon)