氷点下の中強い風に吹かれて写真を撮る。雪が頬を殴りカメラの側面には雪が積もっていく。足先は凍え、指先は悴んで使い物にならない。耳は千切れそうで、そのままもいで感覚をなくしてしまいたいほどだ。
 そんな悪環境の中を三脚を担ぎ思い機材を背負って歩く。歩く歩く。雪に足をとられ転倒する。

 こういった悪環境の中、写真を撮っているとなんだか自分が物凄い事をしている様に、崇高な写真でも撮っているかの様な錯覚に陥る。

 こうやって苦労して撮っているんだ、絶対にいい作品が出来るに違いない!なんて思ってもそれは思い過ごしでしかなく、悪環境で撮った写真が必ずしもすばらしいものとは限らないのだ。

 もしそういった状況で写真を撮っていて、それが良い作品になっていくためには「こんなクソ寒い中撮ってるんだから良い作品にしなければいけない。」というある種の自己啓発的思想に陥らなければいけないのではないのかと思う。