どの様な事も実際に体験してみなければ現実味を帯びてこない。そして、その事柄について真の意味で深く考えさせられる事は無い。


 例えば両親の離婚。

 今回の帰郷で一番インパクトが大きかった事柄だ。半年も前に離婚をしているにも関わらず、自分はその事を知らされていなかった。
 その事実だけとってもなんだか寂しいものだが、自分が遠く東京で生活をしている事を考えると知らされてもどうしようもないというか、ただその離婚をするという行為の妨げにしかならないのかもしれない。

 以前にも危うい事はあったが、まさか自分の親が離婚するとは夢にも思わず、帰郷の際にさらっと聞かされた時は少々焦ったものだ。


 さすがに20数年同じ家に住んでいれば嫌気もさすであろう。しかし、その鬱憤を晴らす術を知らない私の父はその鬱積した思いをついに口にしてしまったのであろう。
 何も無い街だ。街を歩いていても知り合いに会わない事は無い。まして、飲み屋なんて所に行こうものなら確実に誰か知り合いに会う。そんな所で鬱憤を晴らす事など皆無に等しいだろう。
 そのせいかどうかは解からないが、わが町は北海道有数の離婚率を誇っている。それを考慮すれば僕の両親も例に漏れずにいられたという事だろう。


 父の女性関係は知らない。というか、そんな事があるのであろうかと思うほど硬派な人間だ。と、自分は思っている。母は良く喋り友人も多い。と、思う。そんな二人だ。いつかはこうなるのが見えていたのかもしれない。
 それにしても自分は両親のことを何も知らない。馴れ初めのひとつでも聞いておくべきだったと今更後悔してもどうしようもない事だ。


 僕にとってはいつまでたっても父は父で、母は母だ。妹はコレからあの何も無い街でグレずに上手くやっていけるのだろうか。それだけが唯一の心配事だ。