たまに大きな雲が太陽を覆ってしまう事を除いては概ね良好。地理的に人があまり寄り付かない様な所であったせいか人はほぼ皆無といった所だ。しかし、少し足を運ばせるとそこは俗に言われる「トカイナカ」ライフを楽しむ人たちが多く訪れているであろうテニスコートに、野球場。そして、石の川辺。広大なマンション群を背後に、バーベキューがいたるところで繰り広げられている光景は圧巻である。

 正に「異様」という言葉がぴったりに合う光景だ。多摩川沿い、がけを切り崩したような所にあるマンション群。眼に見えるだけで棟はありそうだ。2000世帯以上はそこに住んでいるであろう。一つ謎のロゴの付いたマンションがその異様な光景に拍車をかけていた。


 父、母、子供二人に、祖父、計五人でこじんまりとバーベキューを楽しんでいた。おじいさんのその頭髪はやはりポマードというヤツなのであろう、ゴテゴテにオイリーなヘヤーはモノクロームで上手く表現できるのかと自問自答してしまう。おまけにいい感じで酔っ払っていた。
 羨ましき日常風景である。


 子供達五人が五月も早々にパンツ一枚で川辺で遊んでいた。全員今年中学生になったばかりという彼らはさしずめ現代のトムソーヤ達(富むソーヤと誤変換されたのがやけにしっくり来た)だ。
 ツルにぶら下がり揺れてみたり。川に足を突っ込んでみたり。「ああ、こんなことしたなぁ」と思わせる仕草ばかりに軽い嫉妬を何故か擁く。
 自分達でもさすがにこの季節にこの格好はおかしいと自覚していたらしい。「寒い」と言っていた。


 さすがに上流という事もあって道なき道ばかりを歩く羽目になった。そして、それとは反対に明らかに進めない道が現れ、行動を迂回せざる終えなくなった。
 川沿い半分、道路半分といった所だ。

 竹藪に迷い込み崖を下り、川に少し見えている石を頼りに川を横断し、誰かが付けたであろう鎖をたどり崖を上る。正にサバイバル。上流がこれほどまで過酷だとは思わなかった。


 春もうららな陽気の中で、人々は思い思いのスタイルで川との対話を楽しんでいる。