手元の温度計では3度をさしていた。奥多摩湖付近では霜柱に氷柱と寒さを視覚的に体験する事すら出来る冬ばれは清々しさを通り越し苦痛に近い感覚を私に与えた。

 年越しに使う訳ではない鮭を寒空のした夫婦で捌いている光景未定テナントもほのぼのとしてしまう。話しかけるなりそそくさと奥さんは家へ入ってしまったが、夫は黙々と鮭を捌き続けていた。
 シルバー人材センターで働いていたというその人は、もう60年もここに住み続けているという。今は息子と三人暮らしだそうだ。しわの少ないその顔立ちは60を超えているとは感じがたい印象を受けた。


 さすがに31日という事もあって人はほとんどいなかった。いるのはせいぜい地元の人間。それも老人ばかりだ。以前の台風の影響であろう土砂崩れの後が目に痛い。人無き家はそのままにされ、傾いた家はどこか退廃的なイメージを彷彿とさせる。
 ここもいずれ人がいなくなってしまうのではないのかという感が実に否めなかった。


 奥多摩郵便局前の喫茶店の様なところのおばあちゃんがじっくり煮込んだカレーを食べたかったが「ごめんね。食事はもう終わっちゃったの」といわれてしまってはしょうがないので次回に期待。


 かれこれ四、五年多摩川を撮っているがようやく300本に達した。