昨日とは打って変わって晴天。前日とほぼ同じ場所から出発し、あえて上流に向かう。南からの風は強く、真上からの日差しも強い。寒いのか暑いのか解らないが脇汗はかいていた。


 上半身裸、傍らにはワインとアルトバイエルン。パレットを川で洗っている彼は50近く見えた。この連休から多摩川を描き始めようと思いここへ来たそうだ。ここの地面は珍しいという彼に自分もうなずいた。ここの地面は他の流域とは異なりかなりアグレッシブにでこぼこしている。
 ラフスケッチを終え、もう少し上流へ行ってまたラフスケッチをしてから家へ帰り、たしか5号(新聞紙を広げた二倍と言っていた)の紙に描くのだという。


 1メートル程の高さから飛び込んで遊んでいる5,6人の少年達。歳は中三だという彼らの傍らにはセブンスターがあった。自分がいるにも関わらず隠さず吸っているあたりは肝が据わっていると思うべきか、私がなめられていると思うべきか迷う所だが、私も注意できる様な人間ではないので昔話などを適当にした。
 さすがにこの季節の水は冷たかろうと思ったが、大した冷たさではない。が、さすがに水から出れば体は震え鳥肌ものという事は見れば解る。

 ふざけて突き落とす仕草や、ゲームの話をしてくれる当たりや、チンポを見せてくるあたりはさすがに幼さが見える。「チャンプロードに載せてよ!」の一言だけは今も忘れられない。


 二人で世間話をしている釣り人は60を有に超えているだろう。風が激しく吹く木下でいる彼らに私は思わず目を奪われ話しかけてしまった。話をしているその時、リールから糸が引っ張られていく音後聞こえた。これはかなりの大物だぜと思ったのは私だけらしく、二人はいたって冷静だった。しばらくして釣り上げられたコイはすぐに放されるもその場で横たわったまましばらく動かなかった。
 頃合いを見て撮らせてくれと交渉してみた所小さい方の老人が激しく照れ始め手私は萌えた。「撮られるの好きじゃねーからよ」と言う彼も実は写真を昔やっていて、富士山をよく撮りにいったと話してくれつつ、私の口説きにお怖じてくれた。その仕草がまた萌える。
 もう一人の老人は意外にあっさり応じてくれ、釣れて満足だったのか荷物をまとめてそそくさと帰っていった。


 一度歩いているにも関わらず歩く場所で随分と見える風景が違う事に気づかされた一日だった。まるで多摩川ではない様な川幅に、原風景的人々の過ごし方に若干感動した。結局目当ての像の足跡の化石は台風の時に埋もれてしまい見れなかったが、橋の下にあるホームレスが殴り殺されてしまった後に手向けられた鼻や選考を見れた事は収穫だ。

 「野宿者にも人権を」そう書かれた鉢植えに植えられた菊は不思議と奇麗に見えた。