予想外の曇天。人はまばらにというか、日野といういう土地柄も相まってさっぱり人がいない。上に、何だか人に声をかける事に躊躇してしまう様な感じ。


 釣り人。多摩川ではよく見る人達だが少し奥まったモサモサした場所で一人ヘラブナ釣りをしているところに何故だかグッと来た。おまけに流れがさっぱりなので水が腐った様な匂いが立ち籠めている中一行につれていない様子だった。実際釣れてなかった。その事を聞くとしきりに「放流したばかりだから、何処に魚がいるのか探っているのだ。」という事を言っていた。
 色々な釣りをしたけれど、ヘラブナが一番良いと彼は言っていた。スポーツフィッシングの様なもので、ブラックバスの様なアクティブなものではなく、ある種日本的な静的なモノだとも言っていた。以前、海釣りをしていた時に何だか名前は忘れたが(俺が)小さくて奇麗なので吸いそうで飼っていたが、実は毒を持った魚らしく、子供いたので速攻で処分したと言っていた。

 その最中、そのおっさんの知り合いらしいおっさんが大量の笹を担いで通りかかった。農家をしていると言う彼はその他家を肩に担ぎもう片方の腕で結んだ紐の部分を握り軽快に歩いていた。その笹はどうやら冬に備えての小さなハウス状の作物を冷気から守る為に採ってきたらしい。
 しばし釣り人と話をして足早に去っていった。その時も釣り人は「放流したばかりだから、何処に魚がいるのか探っているのだ。」と言っていた。


 そして、しばらく未知無き道を歩いた末にようやく大概の人間が歩くであろう道にでた。そこの小さな沢で何やらまた釣りをしている二人が目に入る。明らかに魚など泳いでいそうも無い所だったので声をかけてみると「エビを釣っている。」という答えが返ってきた。
 エビかよ!と思ってみて見るとザリガニの類いで、どうやら自身で食らうのではなく家で飼っているブルーギルや亀の餌にするらしい。小さな、本当に小さなエビが餌のイカに近寄ってくるものの一行に見慣れたサイズのザリガニはつかず、「全然釣れませんね?」と聞くと、「この前は入れただけで釣れたんだけどなぁ」と二人声を合わせて返ってきた。きっと、釣り過ぎていなくなったに違いないと言うと、二人ともあまり喋らなくなってしまった。
 そんな一人は「マミヤ」さんという。服装はどう見ても多摩川にザリガニ捕りにいくぜ!!と言った格好ではなく小粋なマフラーにジャケットと防止を組み合わせたジーノ的な格好で、もう一人は色あせた青のツナギであった。体格もでこぼこな感じで何だか面白かった。
 想像で、彼らは昔からこの辺に住んでいる小学校以来の友人だと決めつけた。


 天候のせいか、季節のせいか、何故だかあまり声をかけなかった。ラジコンヘリをしている集団。ラジコン飛行機をしている集団。親子で歩いている人達。いくらでもいるのに集団になると何だか萎えてしまう。