4年ぶりに訪れたバラナシは随分と変わっていた。4年間の中で私も随分と変わったし、土地自体も変わった。丁度車と車がすれ違うと二つの速度が合わさってもの凄く早く感じられる様な、そんなものなのだろう。それでも変わらないものも勿論ある。


 まず驚いたのは日本食の新規店舗と、改装だ。イーバカフェとかいうやたらとおしゃれな店ができていたのは随分と驚きだった。テーブルにはジャパニーズソイソースが普通においてあり、おしゃれなスタバかと思う様なソファーや、テーブルにいたってもこだわりが感じられ、日本でやってもそこそこ受けが良さそうな内装だ。それも当たり前でオーナーが日本人であるとの事だ。
 そして、次に久美子ハウスの改装と新規店舗参入だ。実際止まれていないので内装がどう変わったか、新店舗がどうなっているかという事はいまいち解らないが、息子が店番をしていたのには驚いた。日本語ぺらぺらで男前で、日本人女性が筆禍裏やしないかと危惧してしまう。今では韓国人も結構な人数が宿泊しているらしく、レストランで食事をしている時に聞こえてくるのはハングルが以前の6割増だった様に思う。
 次に、しゃん亭だ。以前の糞遅い、狭い体制に変わって、今では広々としたスペースに、ストレスをあまり感じさせない対応に加え、インターネットスペースも兼ね備えたジャパニーズレストラン&コリアンレストランへと変貌を遂げていた。その陰にはやはり日本人の陰があり、フロアでせかせか動いているのは店主の奥さんであった。まさかの結婚です。

 こうやってどんどん観光地となっていくバラナシを見ていると何だか複雑な気持ちにならざる終えない。一度川沿いを歩けば「ハシシ」「ワンルピー」「アクセサリー」「カソーバー」「マッサージ」「キャンドル」と様々な人に声をかけられ落ち着いて川を眺める暇も無い。
 しかし、早朝ともなれば昔から変わらないプージャーや選択の風景がアサヒをバックに広がる光景が目を伝って心に何とも言われぬ心地を与えてくれる。それを知っている旅行者はよく早朝にチャイを飲んでいたりする。そんな傍らを歩くのが実に心地良かった。


 そして、少しはなれた所まで足を伸ばせばまた違ったバラナシが見えてくる。ガートを広げようと工事をしている風景や、人里離れた寺院でガンジャを捏ねている風景、修行に励むサドゥーの集団、橋の下に住む人達に、新しい橋を造っている人達、ガートで売られているマリーゴールドの農園に育てる人達。立派な学校に通う学生に、謎の遊び(クリケットや短い木の棒を叩いて打って、それキャッチする的な)をする子供達。

 中でも圧巻だったのは牛を丸ごと食っている犬達の群れだ。俺の存在を警戒しつつ牛肉に一心不乱に噛み付く犬達は野生そのものだった。それを警戒しながら近づいて撮影するのは大変な恐怖を覚えた。俺が食われないか?牛の表情が怖過ぎます(死んでますけど)。とか、いろいろ考えてしまった。
 そして、人の死体が食われているのも感動的だった。これが「人は犬に食われるほど自由だ。」なのか!と思わされた瞬間であったが、如何せん川に阻まれ距離があったのでがっかりであったが、本当に犬が人の肉を食うのだと言う事を知れて嬉しかった。


 4年ぶりに訪れたバラナシは何だか以前より広く感じられた。それは当時18歳だった自分があまりにも見る世界が小さ過ぎて、自分の足でいける所まで行こうともせずにうずくまっていた事を意味しているのだろう。自分の足が進む誰世界は広がっていき、そこで見えるものも無数に増えていくのだと気付けなかったあの時の自分や、行くだけで満足しきっていた自分が凄くおさなかったのだと気付かされた。
 深く入り込んでいくという事には未だ躊躇があるが、以前よりは歩を進める事に躊躇はなくなったのだという安心感と危うさを考えさせられた1週間だった。