雲が全体に薄らとかかり日差しを見事にシャットアウトしてくれたのは幸いだったが、それでも溢れる汗はジットリと服に染み込み体にまとわりつく。

 宮ノ平という所からひたすらに歩く。ここまで上流に来てしまうと川のすぐ横を歩くという事が困難になってくるので降りれる所で降りては眺めて戻りを繰り返さなければ行けない。ある時は舗装された道、またある時は道なき道と繰り返しているうちに降りるのが面倒になってくる。それが上流の作法だ。

 軍畑辺りまで来ると川沿いに人の歩ける道が現れ出す。以前来た時に岩登りをしていた人がいたのでどうせいるだろうと探しながら歩く。しかし見当たるのは軽い散策を楽しむカップルや家族、川下りをしている人や釣り人くらいだ。

 沢井辺りでバイクに座っている老人に声をかけてみる。その老人は長い事この付近に住み、かつては建築業に従事していたと言う。快活に話す老人は甘い川の景色は変わってないと言うが、台風がくる度に川幅が変化していると教えてくれた。
 その生で今まで陸地であった所も削られ去年の様に岩登りをしていた人が来なくなったのではないかと教えてくれた。
 話が終わると仲間が呼んでいると言い。軽快にバイクを操り去って行った。

 残念な結果に落ち込む訳でもなく私は軽快に御岳駅に向かい、みたけラーメンを食べて多摩川を後にした。リーズナブルでびっくりする程の美味しさではなく、いわゆる「懐かしい」味のするラーメンだった。しかし、また食べたくなる味だ。