晴天、気温も過ごしやすくジャンバーを脱いで歩いた。


 絶賛工事中の港町から歩き始める。露出計の電池がない事に気付きヤマダ電機に走り込むというアクシデントを乗り越えひたすら下流に向かって歩く。


 私は大体動物には嫌われる。今日も例に漏れずパピヨンに吠えられ、ニタニタ飼い主に話しかけてみる。もう7歳になるその犬は誰に対しても吠えるそうだ。人間換算的に7歳の犬と変わりない飼い主のおじさんは犬を抱き上げ触らせてくれた。「抱いていれば吠えないんだよ」と言われてなでてみるがどうにも前足で私の手を押しのける辺りくせ者だなと思った。


 またしばらく歩いていると釣り人がハゼを釣っていた。昼の二時くらいから来ていると言うおじさんはそこそこの釣果を上げながら謙遜とも照れ隠しともとれる様な口調で「ぜんぜんこねぇーな」なんて言いながら「あっちの方は全然釣れてないみたいだな」とも言っていた。
 近くに住む彼には二人の息子がおり、中学生になる長男が登校拒否をしていると教えてくれた。母親に似て頑固なのがまた厄介だと何故だか少し嬉しそうに見えた。

 そんな彼からすぐ脇の木下に朽ち果てたホームレスホームでの事件の話を聞いた。

 今年の夏にそこに住んでいたと思われる若い(30代)男性がミイラの様な状態で見つかったそうだ。釣りに来る人は多いけれど、さすがにホームレスホームの中までは誰も覗く訳もなくしばらく放置された状態で見つかったそうだ。

 すぐ脇だったので恐る恐る中に入ってみると、多摩川界隈では当たり前の様に見るであろう主亡き窠といった状態であったが、見つかったであろう寝床と思われる場所には乾涸びたウジ虫が溢れ、ヒトガタとも思われる跡が残り、積み上げられた服の上には首輪をつけた猫が寝ていた。
 立ち入り禁止の黄色いテープはずれ落ち、使用していたであろう自転車には土埃が何層にも積もり時間の経過を思わせる。
 そう考えると、いくつも見てきたこの様な状態の場所は死んでいったホームレス達のかつての窠だったのかもしれないと思えてくる。


 そんな事を考えながら歩いていると数ヶ月前に写真を撮った中学生が数名の友人達と遊んでいた。私を見るなり「戦場カメラマンだ!」などというものだから、渡部さんのマネをしてやったら、してやったのに大して笑わなかった事に関しては遺憾の意を表明したい。
 そんな彼らは思春期全開よろしくと言わんばかりにレンズを拒み、なかなか撮らせてくれない。ウヘウへ言いながら男子中学生を追い回す姿はさぞ気持ち悪かった事だろう。


 そんな彼らにもほとほと愛想が尽きたので河口に向かって歩るいていると何故か警官が多い。しばらくいくとスーパー堤防絶賛工事中の看板が目の前に立ちふさがり河口への道は断たれた。来年の五月までは入れないそうだ。トヨタの工場とかどうなってるのかが気になる。