快晴。昼過ぎから雨になるという予報もハズレ、少し強い風に吹かれながら川崎側を河口に向かって歩いた。

 久しぶりに平日に多摩川に来た事を思い出して、前はいつだったろうかと考えていると、学生の頃、7年か8年前じゃないのかと思えてきた。
 平日にも関わらずゴルフ練習場は多くの人がいて、カップルがいて、釣り人がいる。少し少ないくらいはいつもと変わらなかった。


 歩いているといきなり「はい、ポーズ」とか言っておばさんが戯けて話しかけてきた。近くに住んでいる彼女は息子と言い争いになり外へ出てきたと言う。
 昔は矢口渡の当たりに住んでいて、その前は戸越銀座に住んでいたそうだ。東京大空襲の時は小学生で、防空壕を掘ってもあそこらへんは水が出てくるから水をかき出さなくてはいけなかったと教えてくれた。
 ここら辺の景色も随分と変わって情緒がないと嘆き、昔は川に良くハゼを釣りに行って、晩ご飯にしたが、今はシジミでも嫌だと言う。それは、川の汚さと、空襲の時に沢山の死体が浮いていた記憶からくる心情的なところによるそうだ。
 私と別れるとおばさんはまた別の人に話しかけて無理矢理すり寄っていた。


 スーパー堤防の工事もだいぶ進み、以前来た時よりも手前でウェンスが道を塞いでいた。