彼女は1メートル以上有るであろう髪を布キレで結い、また布キレでこさえたであろう衣服をまとっていた。そして、顔には謎のペインティングを施していた。例えるのであれば、それはインドの修行僧「サドゥー」の様であった。

 彼女は対岸の森を住まいとしている。髪型を次にどうするか思案をしているとも言った。ボソボソと吐く言葉は見た目以上にハイキーで、どこと泣く女性らしさを感じさせた。
 そして、独り言の様に「ワタシハイッテナイヨ」と謎のタイミングで2回ほど言っていた。聞き返しても返事は無い。もしかしたらコレは自分の聞き間違いなのかもしれない。

 無論写真は取らせていただけなかった。アレほどまでにフォトジェニックな存在をかつて日本で見たことがあるだろうか。


 彼女の息子はかつて引き篭もりだった。そして彼女は世に溢れる引き篭もり問題を他人事とは思えなくなってしまった。

 スピリチゥアルな事が大好きな彼女は、自分がインドへ行った事がある事を知るや否や眼の色を変えて質問をしてきた。

 「5000年以上昔に予言された謎の葉っぱの文章を知っていますか?(葉っぱの名前は忘れた)」「ケララ州に行った事ありますか?」「やはりナンを食べるんですか?」

 その質問攻撃はインドだけでは飽き足らず、引き篭もり問題、現代資本主義社会に対して、自分が今行っている運動、その他様々な質問を延々とされ、1時間位が経過した。
 最終的には今言っている団体のセミナーに来ないか?とまで言われた。断れない小心者の自分はメールアドレスを教え、URLなり資料を送って頂く事と相成った。


 改めて多摩川には色んな人が居るなぁと、思った一日であった。


 そして、新たな格言が生まれた。


 「寝ていない状態で撮影へ行くな。」