それは気持ち悪いからだろう。新鮮なままで食う為には生きているうちに捌いてしまうべきだ。そんな時に「食べないでください。お願いします。」なんて言われた時にはどうしようもない。仮に家畜として人を旨く育てるとしたら・・・少し想像しただけで無性に気持ちが悪くなる。

 ヴァラナシではよく死体を焼いている光景を目にする。ある時歩いていると何とも香しいくもジューシーな香りが鼻をかすめた。それはまさにバーベキューの様なそんな香りだった。そう、ヒューマンバベキューだ。
 その時私は無性に肉が食いたかった。その感覚がそうさせたのかもしれないが確かにその時人でもいいのではないのかという気持ちになった。


 人は人を食ってはいけない。もしくは、人は人を食うべきではない。といったある種の倫理観からくる気持ち悪さが私達に人を食わせない為に働いているのかもしれない。しかし、一度それが崩れたならば人は人を食うのかもしれない。

 例えば、雪山で食うものが泣く一人一人死んでいく様な極限の状況であるとか(テレビで見た様な気がする)、もうなんかラリッちゃってどうしようもなく、そう好きになりすぎると食べたくなる様な感覚(私は無性にかわいい猫の顔にかぶりつきます)だったり、その倫理観の様なものが崩壊する瞬間になら気持ち悪さがなくなり、心の箍が外れるのかもしれないと思う。
 あるいは、どこぞの森深くにいると聞く食人族の様に始めから人を食っては行けないなんて言う決まりが無いとか。

 果たして人の肉はうまいのだろうか?