視覚と思考の間で揺らぐこの感覚は大体酔っぱらっている時か美術館で起こる。まるで夢でも見ている様な感覚、フワフワと視点が定まらなくて全てが見えている様な感覚。明確に見えてくる輪郭に違和感を覚える。私がどうしてこうなってしまったのか、こうなってからどうするのか、こうなってしまった過程は、そんな事ばかり考える。ここにあるものの変化に加担してしまった些細な自分の行為の量や思考の変化、その時に起きたこの目の前の光景が思い出せない。覚えていないという事の奇異さ。自発的な行動の中の無意識さと無責任さ、何も考えていない時に見ていたであろう光景や行ったであろう行動はどこへ行ってしまったのだろうか。無かった事にしておこう。無かった事にしておきたい。今見えているタバコの凹みは元からこうだったんだ。私が手にした時からこうだったんだ。思い出す事を諦めよう。諦めた時に気になり出す。あれは何だったんだ。考え出す。覚えていないから付け加えてしまう。これはこうだ。そうなんだ。そおやって納得していく。けど、大体外れてる。けど、それを確認するすべを知らない私は放っておいて忘れていく。