天候はお世辞にも良いとは言えず、空にはどんよりと雲が敷き詰められていた。風は冷たく冬の様相を感じられる一日だった。

 さすがにもうバーベキューをしている光景は見当たらず、水彩画をしたためる老人や釣り人ばかりが眼を引くが何より目を引いたのはせせらぎ館付近の護岸工事と、それに伴う河川の推量の違いだ。一ヶ月そこらでここまで大規模に工事が進むというのは相当驚いたし、それの為に近くにあった沼的な何かが干上がっている事にはたまらなく痺れた。浮き草の無惨な姿は見ていてあまり気持ちのいい物ではなかった。


 そんな河川工事の脇でコンロを持ち出しコーヒーやインスタントラーメンを口にしている人達が居た。幼稚園のパパ友達だと言う彼らには一人一人男の子が居て、そのワイルドさに何とも心引かれる物があった。
 二人の庭師が生田緑地にあるビオトープの話をしてくれた。そこは幼稚園のパパ達に彼らが声をかけて有志で仕上げたそうで、後に幼稚園の課外授業に使われているそうだ。そして、彼らが座っているその場所もまさしくビオトープであるという事も教えていただいた。
 庭師の内の一人は昔映画関係を目指していたらしく、私のカメラに興味を示し、私もあまり詳しくないながら説明をさせていただいた。あげく、コーヒーや煎餅までごちそうしていただき大変感謝している。それにしても、あの集まりは実に子供達にとって素晴らしいものだと思った。


 何故だか今日は声をかけられる事が多かった。と言っても二度しかないが、これは珍しい事だ。一人はフィルムを交換している最中(口にフィルムをくわえている最中)に「そのカメラは変わったカメラだな」と、声をかけられ、「いやー今日は良い経験をしたー」と言って去って行った老人に始まり、猫をこねくり回している時に「猫好きなの?これやるよ!」と言ってキャッツアイという石をくれた釣り人に終わる訳だが、その釣り人を撮らせてもらおうと跡を折って結局取らせてもらえなかったのだけれども、何故だか「萩本欽一の父さんが作ったカメラは凄い」という話を聞かされた。もう一人なんか凄い人が居るらしいが、思い出してもらえなかった。