快晴。しかし、雲が左岸から押し寄せた異様をたまに隠す。てか、それは快晴ではない。


 六郷土手から歩き初めてすぐにヘリコプターのラジコンを飛ばしているおじさんに出会う。陽気な様子の彼は少しだけ酔っていた。25カ国をこれまでに旅をし、若い頃にはサラ金に手を出し右往左往したが、今ではすっかりきっちり返済をとげて気ままなフリーターライフを送っているそうだ。
 撮影の合間は常に動き様々なポーズをとるものだからピント合わせに苦労をした。合わせて、雲の動きが激しいので露出の変動にも苦労した。
 基本多摩川ではラジコンは禁止だ。しかし、それでもやるところの無い人達は集まる。そんな中で国土交通省の原付ライドな巡回員との接触は避けられず、様々にもめたと言う。酷い時は警察を呼ばれるらしい。そんな彼でもさすがにマシンのメンテナンスは怠らず、私と話している最中にもプロペラのねじをキツく締めていた。「羽が飛んでいったら危険だからね」


 ポツポツ歩く野球が見えて、凧が見える。バードウォッチングをしている人も見える。家族がいて子供達が駆けている。ホームレスが水を汲み猫が逃げていく。少しだけいつもより風が冷たい。


 ヨットハーバー的な風味を醸し出している天空橋付近。何も無いなと振り返ればおばさんが私の見ていた方向にカメラを向けている。そして、サイド振り返ると景色が違って見えた。いつもは見逃していただろうし、外は思えていなかった風景がリズミカルに見えた。サンキューおばさん。そう告げたい気持ちで声をかけたおばさんの鼻からは一筋の毛が見えていた。
 最近写真を始めたと言う彼女は大田区のフォトコンテストに応募しようと考えている様で、「イキイキなんとか?」という部門にでも応募してみようかと考えている様だが、他人の子供を撮るのはどうも引けるそうだ。
 最近始めたにも関わらずフィルムカメラというのがかっけーなって思った。


 ポツポツ歩く。屋形船に集う人達、歩く人に走る人に自転車をこぐ人。見えてくる異様なファッションの女性っぽい人、おじさん。
 平和と書かれた看板をぶら下げる鳥居から先はなかなか川沿いを歩かせてくれない。入って良いのか解らない川沿いを歩いた先には日航××慰霊碑と私には読めない漢字で書かれた石が置かれており、歩道からは入る事を拒み見る事を遮る様に垣根が出来ていた。

 陽が沈み帳に向かうすがら雪が降り始めた。その先に国際空港が見えた。